クレヨンしんちゃん モーレツオトナ帝国の逆襲 a                           a

泣いた。
邦画がプロの世界ではなくなってしまって、もう何年経つだろうとしみじみ思ってしまいました。
映画の世界にも学歴社会が浸透し始め、東大の映画研究会出身の奴しか、映画会社の上層部に相手にされ
なくなり、角川映画などというオタク映画が世の大勢を得たとき、日本映画界は一度死にました。
しかし、その間も、漫画、アニメは、玄人の世界を維持してきました。そのひとつの象徴が、この映画だと思う。
 今は、まぎれも無く21世紀である。
しかし、いまだに日本中の子供たちは憂鬱な思いをしながら無理矢理朝ご飯をつめ込み、ほとんどのサラリーマンは、どこかに
疑問を持ちながら毎朝出勤し、町には、欲望や怠惰などの人間のわかりやすい部分が形になったものが溢れ、世界有数の技術大
国、世界第二位の経済大国になったはずの日本は、ただの雑居ビルと商店街の国になってしまいました。
”本当にこれが21世紀なのか。” この映画は、まさにここから始まっています。秘密結社イェスタデーワンスモアのリーダ
ーがこの計画を思いついたのも、この映画の監督が、この映画を思いついたのも、すべてこの言葉から始まったのだと思う。
 秘密結社のリーダーである”ケン”は、日本中のオトナ達を20世紀の虜にし、21世紀を終わらせようとします。しかし、
野原しんのすけたち、カスカベ防衛隊が、この恐るべき計画に立ち向かいます。
”未来は常に俺たちの心のなかにあるさ” ”オトナになりたいから。オトナになってオネイサンみたいなきれいなお姉さんと
いっぱいお付き合いしたいから” 似ているようで、正反対の言葉である。
未来を創っていくのは子供たち。しかし、今を一生懸命生きる人たちがいなければ”ミライ”なんてものはやって来ない。
オトナたちを21世紀に連れ戻すため、しんのすけは走ります。
いくら、野心や才能を持った人が会社や技術を作ろうと、人々に”心”が無ければ、ただビルを増やし、ただ人間の怠惰を助長
させるだけに終わってしまいます。
”人々に心が無ければ、子供の頃に思い描いていたきれいな未来はやってこない。だったら、もう一度、昔からやり直そう。”
ケンの考えには、けっこう共感してしまいます。もしかしたら、この国はずっと前に時間を止めてしまったのではないか、
この国に未来なんてあるのだろうか、なんて個人的に考えてしまいました。
とにかく面白い映画。シリアスなストーリーのはずなのに、全然シリアスじゃなく、ちゃんと、クレヨンしんちゃんになっているのも
すごいと思うし、クレヨンしんちゃんだから、この映画が作れたのだと思う。
アニメなんて、という人でも、レンタルビデオでいいから一度見てほしいと思います。

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